後期の授業期間が始まるまで、ポートアイランドキャンパスのカフェテリアは閉店中。
それまでのあいだ、大学院生や教職員は、近隣の食堂にお邪魔することになります。
この日訪れたのはポートアイランドキャンパスから一駅隣りの神戸空港。空港には利用者向けの飲食店がありますので、食事の場所に困ったときには結構使えるんです。

後期の授業期間が始まるまで、ポートアイランドキャンパスのカフェテリアは閉店中。
それまでのあいだ、大学院生や教職員は、近隣の食堂にお邪魔することになります。
この日訪れたのはポートアイランドキャンパスから一駅隣りの神戸空港。空港には利用者向けの飲食店がありますので、食事の場所に困ったときには結構使えるんです。
8月4日には、徳島県立城南高校の1年生がポートアイランドキャンパスにやってきて、実験講義を受けていきました。実験は「多様な色を示すアゾ色素を合成する」というタイトルで行いました。
二人一組で実験を行い、班ごとでいろいろな組み合わせのアゾ色素を作り、そのpHによる色調変化について調べていきました。アゾ色素は、アニリンの誘導体を亜硝酸ナトリウムで処理し、フェノール類と混合することで簡単に合成できる色素です。簡単に作れるのですが、アニリン誘導体とフェノール類との組み合わせによって、違う色を呈し、また異なるpHで色が変わるんです。自分がつくったものなので、その変化を見ると本当に楽しいものです。これぞ「ものづくり」という、楽しさを実感してもらえたらうれしいですね。
前回書いた、研究で培うことのできる「能力のホールパッケージ」とはどのようなものでしょう?
研究のプロセスに沿って、箇条書きにしていきたいと思います。
・文献調査/情報分析能力
研究とは未知のコトを明らかにしたり、世界初のモノを創造したりすること。したがって、まずは論文等の文献を調査して情報を分析し、「何が未知なのか」「何が既にあるのか」という事実を把握する必要があります。
・問題発見/問題提起能力
未知のコトや未創造のモノであっても、解明して面白くもなければ、つくっても何の役にも立たない、というようなものは研究の対象としてもしょうがありません(長期的にみて面白いか、役に立つか、の判断は本当に難しいんですけどね)。何に取り組むべきか、発想と見極めが求められます。
・問題解決能力/計画力
取り組むべき課題を見出したら、次はどう取り組むか? です。天才的なひらめきがある人は素晴らしいのですが、ひらめきがない人も、たくさんの研究事例から「定跡」を身につけることで研究者として十分な問題解決能力/計画力を身につけることができます。
・実験技術
言うまでもありませんが、実験技術がなければ実験することができません。実験を必要としない科学・科学技術もありますが、ナノやバイオは多くの場合、実験によって新事実を発見したり、新物質を創造したりします。
・コミュニケーション力
研究というと、一人で没頭しているイメージがあるかもしれませんが(そういうタイプの研究者もいないことはありませんが)、学生の研究は、教員とはもちろんのこと、まわりの人たちとコミュニケーションを取りながら協力し合って進めていくことが多いです。また、会社では上司を納得させたり、部下を指導することもあり、コミュニケーション力は重要です。
・ 考察力
実験結果という客観的事実を読み取って、それが物語っている事柄を論理的に考え、纏めていく能力です。さらに、考察の途中で生まれた疑問や仮説を検証する実験や調査の計画を立てる力につながっていきます。実験結果を「マーケット調査結果」や「ユーザー動向調査結果」などにおきかえて考えてみれば、広く必要とされる能力であることがわかると思います。
・プレゼンの能力とスキル
研究成果を論文のかたちにまとめて発表したり、壇上やポスター前に立って口頭で成果を伝えたりする能力です。成果の「どこが新しいか」「どこが優れているか」などを、背景や比較対象をうまく示しながらアピールしていきます。また、企業では、研究を行う以前に、「こういう研究に取り組みたい」「こういう成果が期待できるからこれをやれば会社のためになる」と上司を説得しなければいけません。
いかがでしょうか。このような能力が求められるのは研究職や研究開発職だけではないことは、すぐにわかっていただけると思います。例えば、ナノやバイオの実験とは縁のない、総合職、営業職でも、上に挙げた能力は必要ですよね。
でも、このような能力を磨くためには、何か、本気で取り組む材料が必要なんですね。その「何か」がFIRSTでは、ナノやバイオだ、ということなんです。
前々回、FIRSTで学んでいる内容は、それを直接活かして仕事をする人にとっても、そうでない人にとっても役に立ちます、と書きました。話の結論が見えてきましたか?
結論A:ナノやバイオの研究者になろうと人にとってはFIRSTで学んだことは直接役に立ちます。
結論B:まったく異なる、例えば、文系的な職種に就こうと思っている人にとっても、FIRSTで学んだ内容を活かして研究に取り組むプロセスが、いろいろな力を身につけるのに役立ちます。
ということなんですね。もう一つ、AとBの中間を付け加えさせてもらうと、
結論C:ナノやバイオ以外の理系の道に進もうと思っている人にとっては、研究に取り組むプロセスで身につけたことは当然役に立ちます。さらに、ナノやバイオとは直接関係ないと今は思われていることを、ナノやバイオを関連づければ、新しいことが生まれます。脳科学と情報科学が結びついてニューラルネットワークが生まれました。酵素と電極が結びついてバイオセンサーが生まれました。大学で学んだことと違う分野に進んだら、それはまったく新しいものを生み出すチャンスだと思って下さい。
4回にわたって、企業が大学生に求める能力のほとんどは、研究を通じて身につけることができる、という話を書いてきました。
研究ができるようになれば、どんな仕事だってできるはず! でも、研究が難しくて手に負えないもののように感じるからといって、研究を楽しめないからといって、がっかりすることはありませんよ。研究がうまくできなかった人は、どんな仕事にも向いていない、というわけでは決してありません。仮に、最終的に、研究の能力のホールパッケージを身につけなくても、個々の要素をひとつでもふたつでも身につけていくだけで、大きな前進です。その能力を活かせる、やりがいのある仕事が世の中にはたくさんあるはずですよ!
8月3日は、兵庫県立明石高校の1年生がこのポートアイランドキャンパスに来て、実験講義を行っていました。明石高校はフロンティアサイエンス学部と高大連携に関する協定を結んで、教育をサポートしている高校さんです。毎年、1年生、2年生がそれぞれポートアイランドキャンパスに来て、生命科学に関連する最先端の実験をしています。今回の実験は、科学技術振興機構が支援するサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)の支援の下で、「細胞の本当の姿をみてみよう」という実験タイトルで開催されました。
実際に細胞を使って、細胞核やミトコンドリア、ゴルジ体、中心体、微小管、アクチンフィラメントなど、生物の教科書に載っている細胞小器官を自分たちで光らせて観察してみました。以下は細胞核(青色)と細胞分裂の際に重要となる微小管(緑色)を光る抗体によって染めたものです。やっぱり、教科書で学ぶより、自分で染めて、自分の目で見た方がよくわかるものですよね。