月別アーカイブ: 2011年6月

産学連携サロン開催

先週の金曜日、ポートアイランドキャンパスの7Fレクチャーホールにて「産学連携サロン」が開催されました。

産学連携サロンもFIRST独自のキャリア活動の1つで、今回で4回目の開催となります。この産学連携サロンでは、ポートアイランド内の企業紹介などもあり、学部生や大学院生が企業が実際にどのような研究活動をしているかを知る重要な場となっています。今回のサロンは、独立行政法人中小企業基盤整備機構近畿支部と甲南大学FIRST/FIBERの業務連携・協定締結1周年記念セミナーとして開催されました。

セミナーは2部構成で行われ、第1部では、学部生・大学院生向けに「学生から見た企業の選び方~3年で辞めないために~」「中小企業の未来への挑戦」というキャリア支援と人材育成のセミナーが開催され、FIRSTの学部生も熱心に聞き入り、質問もしていました。

salon
サロン1

第2部の一般向けセミナーではポートアイランドにおける「ライフ・イノベーション技術」についてのお話がありました。セミナー終了後の質疑応答では積極的に質問する学生が目立ち活気溢れる場となりました。

我々もそうでしたが、就職活動をするまでの間、学生には企業との接点というものがほとんどなく、企業がどのようなことを実際にしているかあまり知りませんでした。FIRSTでは、この医療・健康産業が集積するポートアイランドにある利点を最大限に活用して、近隣の企業様のご協力の下、様々なキャリアイベントを開催しています。学生さんにはそれらのイベントに積極的に参加してもらい、いろいろな企業のことを知ってもらい、将来、自分がなりたい仕事を早期に見つけてもらいたいと思っています。

今後もいろいろなキャリアイベントが開催されますので、たくさんのイベントに参加して視野を広げていってもらいたいですね。


教員の研究紹介(長濱先生1)

FIRSTには、生命科学分野の最先端を研究する15名の教員が所属しています。今回は生命高分子科学研究室の長濱宏治先生をご紹介します。
長濱先生は、「化学で医療を革新する。夢では終わらない、夢のような新素材開発をめざす」という研究目標を掲げ、体に優しい高分子素材で新しい医療材料の開発に取り組まれています。

長濱顔写真

 みなさんは、「ポリ乳酸」という素材を知っていますか?
 ポリ乳酸は、グルコース(ブドウ糖)を乳酸菌で発酵して得られる乳酸を化学的に連結して作られる高分子です。実用化の歴史は浅いのですが、近年急速に私達の身の回りに広がっている新素材で、コップや皿、洋服、漁業用網、農業用シートなどに使われているほか、携帯電話、パソコンなどの電化製品や自動車用部品などにも使われはじめ、現在さまざまな分野でとても注目されています。その理由は、何より「地球環境にやさしい素材」であるということです。

 第一に、ポリ乳酸は従来の石油を主成分とするプラスチックとは異なり、トウモロコシや米などの植物から得られるデンプン(多くのグルコースが連結した天然高分子)を原料として合成できるバイオプラスチックです。

 第二に、ポリ乳酸は環境中の水による加水分解や微生物分解によって、最終的に水と二酸化炭素に分解されるため、焼却処理に頼らない廃棄が可能になります。

 第三に、ポリ乳酸は分解過程で二酸化炭素を排出しますが、その一方で大気中の二酸化炭素を吸収して成長する植物を原料としているため、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素量を増やすことがないカーボンニュートラル素材です。

長濱1

 ポリ乳酸はこのような性質をもつため、エコプラスチックとして、環境、エネルギー、ライフサイエンスなどのさまざまな分野での実用化が期待されています。
 一方、ポリ乳酸は生体内分解吸収性高分子であり、生体内で乳酸にまで分解され、これが代謝されて体外に排出されます。乳酸はもともと体内に存在する物質であり、人体に無毒であるため、ポリ乳酸は生体適合性(体に入れても毒性や免疫応答のない性質)をもち、外科手術時に用いる縫合糸や、骨折時に用いる骨接合材など、生体内で使用できる医療材料(バイオマテリアル)としてもすでに実用化されています。しかし、ポリ乳酸は物性や機能のバリエーションが乏しいために用途の拡張性に欠け、縫合糸や骨接合材などの単純な用途のみに使用が限定されているのが現状です。
 そこで私は、ポリ乳酸をベースにした高機能なバイオマテリアルを創り、それを用いることで初めて可能になる革新的な医療技術を開発し、それを世界に向けて提供することを目標に、日々研究に取り組んでいます。

手術後に自然と溶けていく抜糸のいらない医療用の糸は、このポリ乳酸からつくられていたんですね。
長濱先生が今行われている研究は、次回に詳しくお話しますね。(つづく)


仲間達からの祝福

先日開かれた学生によるレク企画ですが、たいへん盛り上がって終わりました。
実は、レクの後にその日に誕生日を迎えた学生さんの誕生日祝いも開催されたようです。

みんなに祝福され、ケーキと共に写る高嶺くんです。こんな大勢に祝ってもらえる誕生日なんて人生の中でそうあるもんじゃないですよね。

高嶺2高嶺1

FIRSTは1学年35名と非常に少ない学部ですが、マイラボを通じてみんなとても仲良しです。
つらいことも楽しいことも共に経験できる親友をたくさん作れるっていいですね。


TA募集はじまる

以前にお話したように、FIRSTの夏休みはイベントが盛りだくさん。毎日のように高校生や中学・高校の先生がやってきて実験していきます。今年の夏休みも、たくさんの高校生や中学・高校の先生がやってきて実験をする予定となっています。

ちょうど試験明けから、それらの実験講座の指導・補助を行うティーチングアシスタント(TA)の募集が始まりました。

以前にもお話ししたように、学部の学生さんにとってTAとして、高校生や高校の先生に実験を指導することは「指導することの難しさと楽しさ」を知ることができるとてもよい経験となります。まだ学生だから教えなくても大丈夫と思っていても、いずれは指導する立場にもなりますので、今のうちに指導力を養うことはとても大切と我々も認識しています。

今年はTA希望者が多いようですが、無事に希望の講座のTAになれるでしょうか。

TA


クォーター制の導入

今日は、以前に「試験前のマイラボ」の時に少しだけ触れていたFIRSTがクォーター制を導入した理由についてお話します。

皆さんの中には「クォーター制(4学期制)」という言葉自体を聞いたことがない方も多くおられるのではないのではないでしょうか? というのも、日本のほとんどの大学では、クォーター制ではなく、セメスター制(2学期制)を採用しているからだと思います。我々FIRSTの教職員も、大学時代はセメスター制で学びました。ただ、海外ではクォーター制を採用しているところも多くありますので、中には知っておられる方もおられると思います。教職員の中にも海外へ留学した経験をもつものもいます。その時の経験から、開設準備委員会のときにクォーター制が長所が取り上げられ、FIRSTで採用されるに至ったわけです。

まず、我々が思っていたセメスター制の問題点からお話しします。

セメスター制では週に1度しか講義がなく、また、たくさんの講義科目が前期や後期に同時に開講されているので、前の週に講義で話した講義内容を忘れてしまっている学生が多くいます。また、高校のように中間テストがない科目も多くあるため、テスト前に試験範囲を丸暗記してテストに臨む学生さんが大半となってしまいます。結果として、テストが終わるとテスト前に勉強したことをぜんぶ忘れてしまうんですよね。試験前に必死に覚えた英単語が試験後にはすっかり記憶の片隅からも消えてしまっているあの状態です。

一方、クォーター制では、前期や後期をそれぞれ2つに分けるので、クォーターの各期においてはセメスター制で開講されていた半分の科目が週に2回ずつ開講されることとなります。週に2回もありますし、科目数もセメスター制の半分となりますので、前の講義の内容を忘れてしまっている学生さんもだいぶ少なくなり、講義毎の理解度は大きく向上することが期待されます。また、場合によっては前の講義の内容の演習形式で定着させることもできるわけです。

また、理系の専門科目の中には、ある講義の内容を発展させたものを勉強させていく「積み上げ式」の講義科目も多くあります。セメスター制では4科目の積み上げが前期、後期、前期、後期と計2年もかかりますが、クォーター制では半分の1年の期間で修得することが可能となります。大学入学後に、目指す道を変えた学生さんに進路変更の余地を残すことができるわけで、非常によい制度と思い、導入に至りました。

だからといって、すべての科目をクォーター制にしたわけではありません。共にいいところもあれば悪いところもあります。FIRSTでも、それぞれの制度のいいところを活用できるように、このセメスター制とクォーター制を講義科目によって使い分けて利用しています。

例えば、時間をかけて継続的に学ばせたい語学のような科目やレポート作成である程度の時間をかけてじっくりと調べたり、考えたりする必要のある実験科目はセメスター制として開講し、短期間で集中して学ぶことが良いと考えられる専門科目はクォーター制として開講しています。

今年で3年目。実際に導入してみてどうだったのか? 

学生さんの講義内容に関する習熟度に関しては、セメスター制よりもクォーター制の方が格段に向上したように思えます。また、試験期間が4期に分散しているため、試験勉強を通じてしっかりと学びを深めることもできているようです。

教員にとって予想外だった点は、講義期間中に学会などで1週間ほど出張に行くと2回も補講をいれないといけないことです。クォーター科目がその期に2つ開講されていれば補講を4つ。こればっかりは想定外でした・・・。

ただ、学生さんが成長していく姿を見ると、そんなこと忘れてしまえますけどね。