カテゴリー別アーカイブ: 研究

マイラボから垣間見える研究風景

FIRSTの一番のおすすめポイントは「マイラボ」です。
それについては、以前にその誕生のお話について紹介したことがありました。

 このマイラボには、一言では表せない我々教員の思いがたくさん詰め込まれています。
今回は、その1つ(動線と設計)についてご紹介したいと思います。

 理系として大学に入学すると、「将来、自分はどんな研究をするのかなぁ~♪」と夢膨らませた人も多くいるのではないかと思います。実際、私たちもそうでした。

 ただし、大学入学直後には一般教養の講義がほとんどで、専門科目も少なければ、研究室で最先端の研究をしている教授の先生方をみることもほとんどない環境におかれていました。そのため、研究ってどこでどんなことをしているのかすら想像だにできなかったことを覚えています。

 というのも、当時の大学は教養課程と専門課程に分かれており、講義を受ける講義棟と教授の先生方が研究を行っている研究棟は、全く違うところに建てられていました。また、教養課程を教える先生と専門課程を教える先生が別の先生であることも多かったと思います。そのため、研究室に配属される4年生になるまで教授の先生方の研究を知ることはありませんでした。「もっと早く知っていればあの授業を真面目に受けていたのに・・・」、「あの学生実験をちゃんとやってればよかった・・・」と配属された後に後悔したことも何度かあります。将来、何をするのか知らなかったがためにきちんと勉強できなかった、そんなことはできるだけなくそう! 研究を知っていた方が勉強のモチベーションも上がるはず! そんな思い(願い)も、教員による話し合いでは多く話し合われました。
その思いをどう具現化するのか、動線や設計などいろいろと話し合いできあがったのがこのマイラボです。

 これは、マイラボから見える教員の研究室がある研究ゾーンへの廊下です。

マイラボ廊下

 マイラボから数メートルの距離に教員の研究室があり、何か知りたいこと、聞きたいことがあればすぐにでも行ける環境にあります。(学生曰く、数秒で行ける、確かに手前の教員の研究室には5秒もあれば行けるかも知れません)

 また、これはマイラボの席から見える「フロアのグループ測定室」の風景です。

マイラボグループ

 廊下の先には各教員の研究室があるのですが、マイラボに一番近いところにはフロア共通のグループ測定室があり、その壁はガラス張りとなっています。マイラボに座っていると、グループ測定室の中で行われている研究が自然と目に飛び込んできます。FIRSTでは、1年生から一人ひとりに席があるので、ガラス張りの測定室の中で行われている研究のシーンがいつでも目に飛び込む環境になっています。「研究室に入った先輩たちは何やら高そうな機械を使って研究をしているんだぁ・・・。あれっ、そういえばこの前の学生実験で、あの機械使ったような・・・ もっときちんと使い方を学んどかないといけないじゃないか!」なんてことも考えるかも知れません。

 当然、教授の先生たちがどんな研究をしているか、直接、研究室に聞きに行くこともできたりします。私たちが学生時代には考えられなかったシステムがうまく具現化できたのではないかと思います。
いろいろなことを早いうちに知ることができれば、視野も広がりますし、学びたいことも明確になっていきます。夢を抱いて入学してきた学生さんたちには、多くのことを学んでもらって、将来、優れた研究者として活躍してもらいたいですね。

 そんな夢もマイラボには詰められているんです。今日は、その一端をご紹介いたしました。


サイエンスライブチケット(新海征治先生)

7月6日は、崇城大学工学部ナノサイエンス学科(九州先端科学技術研究所 所長、九州大学高等研究院 特別主幹教授)の新海征治先生をお招きして、第13回のサイエンスライブチケット講演会が開催されました。

新海1

 ご講演いただいた新海先生は、ISIトムソン社が毎年行っているノーベル賞受賞者予想においても、化学分野でその名前がたびたび挙げられるほど著名な先生です。今回は「分子認識化学 〜そのアイデアの源泉と実現〜」という演題で、これから日本の将来を担うであろう学部生に向けて、自分たちが取り組んでいく研究のアイデアをどのようにして社会に発信するものへと深化させていくのか、ご自身の経験を踏まえながらご講演いただきました。
 
 とてもわかりやすいご講演だったこともあり、参加した学生からもたくさんの質問があり、またその質問に対しても丁寧に説明いただき、学生にとってはとても参考となるお話だったようです(我々教員にとっても有益なお話もたくさんあり、大変参考となりました)。

新海2

新海3

スパコン「京」をテーマとしたタウンミーティングで発表

去る5月12日(土)にポートアイランドの神戸大学統合研究拠点で開かれたスパコン「京」をテーマとしたタウンミーティングで、FIRST4年生の中村 研 君(杉本研究室)と大学院博士後期課程3年の藤本 健史 君(三好研究室)が参加し、「京」をつかって取り組みたい研究について発表しました。

彼らが発表したのは、現在、卒業研究等で取り組んでいる遺伝子の研究テーマだったそうです。

生命の遺伝情報を記憶するDNA。一般的には二重らせん構造を形成しているのであるが、鎖を折りたたんで四重らせん構造も形成しています。この四重らせん構造は、細胞内の複雑な環境によってその構造を大きく変えてしまうそうで、その解明が遺伝情報の転写や翻訳に関わっているのではないか、と精力的に卒業研究をしているそうです。コンピュータシミュレーションでは、複雑なものも計算によって予測することができ、いずれは自分たちの研究をもとに「京」の力を借りて細胞内の複雑な生命現象を予見したいと発表したそうです。

市長も参加した発表の様子は神戸新聞に取り上げられています。

タウン1タウン2


サイエンスライブチケット(学会発表編)

FIRSTの学生実験は、1年生から実践的なプログラムが実施されます。
1,2年生の間は生物から化学にわたる基礎的な操作を幅広く学び、基礎的な技術を習得します。そして、3年生になるとステップアップして学生実験を担当する教員の指導の下で、半年間、研究テーマを与えられ、それに取り組みます。

良い結果が出れば、学会発表や論文発表のチャンスも生まれます。

今回は、3年前期の学生実験科目(ナノバイオラボ2A)で得た研究成果を、茨城県のつくば市で開催された第5回バイオ関連化学合同シンポジウムにてポスター発表してきました。ポスター発表会場は多くの参加者がおり、学生さんたちのポスターの前にはたくさんの人が集まり、90分間自分たちの研究成果を説明し続けていました。

中川勢旗

参加してみた学生さんに学会発表の感想を聞いてみました。

〔勢旗君の感想〕
 ポスター発表に向けて、一緒に発表した中川君とお互いの発表内容に対して質問をし合いながら練習を重ねました。実際に発表してみると、自分がこだわってい
たポイントでないことについてよく質問されました。自分が実験をしながら重要だと思っていたことはあまり聞かれず、聞く側の興味と実験する側にはギャップ
があるんだなぁ、と思い、今後実験する際は、実験する時にもそのようなことを考慮しなければならないと強く思いました。また、人に伝えるのは、相手
の気持ちや状況を考えないとうまく伝わりにくいことも強く感じました。相手がこの分野に詳しい方の場合は、懇切丁寧に説明してもイラつかせるだけでしたし、詳しくない方のときには逆に要点のみ説明しても理解してもらえないこともありました。そのことから、説明は一方通行ではなく、相手の反応を見ながら、
説明の詳しさや話す速さを変えることの重要性を感じました。
 ポスター発表をした中で唯一心残りなところは、実験中は考えもしなかった観点から質問も受け、それに対して適切な回答ができなかったことで、それが今でも悔しいです。次に発表する際には、これを教訓にして、すべての質問に答え、もっとうまく説明したいと思っています。

 学会発表は何度しても慣れないものです。しかし、発表の経験を次に活かしていけばきっとうまいプレゼンもできるようになるはずです。この向上心で今後も頑張って欲しいですね。


かしこい新素材 − スマートマテリアル

この夏に発売される携帯電話はスマートフォンが主流だそうですね。おかげで、スマートマテリアルと聞いて「スリム体型の新素材?」と勘違い人も減るかもしれません。

そうです、この場合のスマートというのは「かしこい」とか「機知に富んだ」とかを意味します。でも、「かしこい新素材」「機知に富んだ新素材」って、何でしょう?

それは「あたかも知能を持っているかのように、周辺環境に応じて機能を発揮する」新素材のことです。インテリジェントマテリアルとも呼ばれます。

未知のことを明らかにしたり、未知のものを創り出すことにチャレンジするFIRSTの3年生実験。
中堀君の前期の研究テーマは、周りに「環境汚染物質」があると形を変える「高分子素材」の開発です。

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(先日のオープンキャンパスでこの内容をポスター発表してくれました。真ん中が中堀君。)

“企業秘密”的な部分が多く、詳細はここでは明らかにできませんが、この高分子素材は、ある環境汚染物質を識別して(かしこいでしょ?)、その汚染物質の存在を、自らの形を変えることによって私たちに知らせてくれるのです。

この新素材開発がうまくいけば、例えば、棒状のプラスチックのようなものを、水の中に“ぴちょ”と浸けて、形が変わるかどうかを見てやれば、河や湖の水や、野菜や果汁の中に、汚染物質があるかどうかがわかる、というわけですね。