FIRSTのフットボーラー

 一般的に、理系、特に実験系の学部学科では、ハードな部活との両立は容易ではありません。FIRSTでも1年生から実験科目がありますので部活との両立はやさしくないと思いますが、そんな中、アメリカンフットボールを頑張ってきたのが2年生の井上君と下農君です。

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 アメフトは肉体的に過酷なだけでなく、試合前にはノート1冊分のプレイブック(作戦)を頭に叩き込んで、各プレイのフォーメーションや動きを身につけなくてはならないという、頭脳面でもタフなスポーツです。これから学年が上がるごとに実験科目の時間数も増えていきますので、練習や試合に出られないことも多いと思いますが、少しでもチャンスがあればあきらめずに続けてほしいと思っています。
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《 練習で、向かい合ってセットしている井上君と下農君 》

個性が見えるマイラボ

 1年次から一人ひとりが専用デスクをもつ学生スペース「マイラボ」。みなさん快適に使えるようにと、いろいろな工夫をして自分仕様の個性的なマイラボにしているようです。

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 まず、上の画像が(私たち教職員が考える)標準仕様。教科書が並べてあって、いつでも予復習できる体制です。このデスクの主は、試験前には同級生や後輩たちから頼られる存在で、勉強会の講師役をしている姿がよく見られます。

 で、下は個性派仕様。なんと茶器が置いてあります。(写っていませんが、もちろん教科書なども置いてあります。)疲れたときにお茶をたてたら、心も体も落ち着きそうですね。今度、どんなときにお茶をたてているのか、持ち主に聞いてみたいと思います。
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たけのこ

takenoko ポートアイランドキャンパスの入り口を進んで正面、事務室の横に、坪庭というのでしょうか、ほんとに一坪くらいのささやかな竹林(?)があります。よく見ると「たけのこが生えている!」 というわけで、事務室で「美味しそう ...」と話題になっているそうです。

 もう硬すぎて食べられないかなぁ。

サイエンス・リーダーズ・キャンプ

夏休みのポートアイランドキャンパスは、高校生や高校の先生で賑わいます。というのも、FIRSTでは、高校生に「ここで学ぶ最先端科学がどういうものなのかを知ってもらうため」に、また、高校の先生には「高校で教える理科と最先端科学がどのようにつながるのかを知ってもらうため」に、たくさんの高大連携(高校と大学の連携)イベントを開催しているのです。

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このイベントでは、学部生にも実験のティーチングアシスタント(TA)としてイベントに参加してもらっています。TAという言葉は、皆さんにとって耳慣れない言葉だと思いますが、簡単にいうと実験の指導、補助をするアシスタントのことです。「えっ、学部生が指導するの?」と驚かれるかもしれませんが、FIRSTの学生実験プログラムを受講している学生さんは、立派にTAの仕事をしてくれます。イベントに参加された高校の先生から、「えっ、君はまだ1年生なの? すごいね!」とお褒めの言葉をいただく学生も珍しくありません。
ただ、参加した学生さんにとって、高校の先生を対象としたイベントのTAはとても緊張するそうです。それはそうですね。つい数年前まで授業を教えてもらっていた先生に教えるなんて・・・。でも、TAの仕事を滞りなく遂行できており、学生実験での技術がしっかりと習得されていることを嬉しく思っています。

TAに参加するには、TAアルバイトの募集に応募する必要があります。学部開設1年目はFIRSTには1年生だけだったので、希望する学生さんはいくつものイベントでTAを経験することができたのですが、去年は1年生、2年生からたくさん応募があり、全員の希望が叶えられない状態でした。そして、今年は3年目。学生の人数も増えてTAを希望する学生さんにとっては狭き門となりそうです。

「私もTAがしたかった」「もっといっぱいTAがしたい!」という学生さんの声も多いので、我々教員は学生さんの希望が最大限に叶えられるように、学部独自の高大連携プログラムの他に、国や企業が募集するさまざまな事業に申請を行います。今年もいくつかの事業で私たちの計画を採択いただいていますが、今日は、全国の中学、高校の先生を対象に実施する「サイエンス・リーダーズ・キャンプ」というプログラムに、私たちの計画が採択された連絡がありました。(サイエンス・リーダーズ・キャンプ事業の詳細はこちらをご参照ください)今年の夏休みには、最先端科学に触れることを楽しみにして、日本各地の高校の先生方がポートアイランドキャンパスにいらっしゃることと思います。

このように、TAをやりたいという学生の希望にできるだけ応えられるよう、教員も影でがんばっています。というのも、TAを通じて人に教えた経験は、参加した学生さんにとって、とてもよい経験となっていると感じられることが多いからです。後期が始まった後、実験や講義への取り組み姿勢を見ていると「あらっ、この学生さんはTAがいい経験になったんだなぁ~」と成長の兆しもうかがわれます。習うことだけでなく、実は教えることから学ぶことも多いんですよね。

今年もそういう学生さんがたくさん現れると嬉しいですね。


3年生実験の紹介(2)

 ある実験室の前を通り掛かると、3つの反応を同時に進めている3年生を姿が
.....何を合成しているのか話を聞いてみると(もちろん指導担当の先生の許可はいただきました)、いろいろなアゾベンゼンを合成しているとのこと。私なりの勝手な解釈をもとにテーマにタイトルを付けるとこんな感じです。

 「アゾベンゼンの合成と応用 ~ 分子を掴む!放す! 光で制御する“10億分の1メートル”のピンセットをつくる ~」

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 アゾベンゼンという物質は、高校生のみなさんにはアゾ色素の骨格としておなじみですが、面白いことに、光を当てるとシス体からトランス体へ、また、トランス体からシス体へと構造が変わる(異性化する)性質があります。

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 このアゾベンゼンの両端に、分子やイオンを掴む“手”を付けておくと、シス-トランス異性化にあわせて“両手”が開いたり閉じたりして、小さなもの(分子やイオン)を掴んだり放したりすることができる10億分の1メートル(ナノメートル)のピンセットができるというわけです。

 さて、このような分子サイズのピンセットが何の役に立つかというと・・・

 まず薬物送達(ドラッグデリバリー)が挙げられるでしょう。この“ピンセット”で薬分子を捕まえておいて、運び、患部で放す、ということができれば、薬の効果を上げて、しかも(患部以外の場所で薬が作用しないので)副作用を低減させることができます。

 また、(高校生の方にはちょっと難しい話になりますが)生体内反応の制御も可能でしょう。からだの中で働いている酵素やDNAを“掴む”ことによって、それらの働き具合を制御することができれば、この“ピンセット”自体が薬として働く可能性もありそうですね。

 彼が実際にどのような応用を目指しているかまでは聞いていませんが、合成が成功してどんどんその先の実験が進むといいですね。

 翌日、共同測定室の前で彼を見かけたので「どう?合成できてた?」と聞くと、「今、IR(赤外線の吸収パターンから有機化合物の構造を調べる装置)をとってきたんですけど.. ...」とあまりうまくいっていない様子。「実験はいきなりはうまくいかないところが面白いんやん!工夫する楽しみがあるということやん!」という、私の学生時代の先輩の言葉を彼に贈りたいと思います。