2年生の実験風景

先週の2年実験の様子を画像でご紹介します。

こちらはナノ実験。シリカゲルクロマトグラフィーで、自分たちで合成した色素化合物を精製しているところです。 

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カラム(ガラス製の筒)の中には、シリカゲルが充填されています。ちょっと化学的な話になってしまいますが、シリカゲルの表面にはヒドロキシ基(-OH)という枝のようなものが生えています。ヒドロキシ基(-OH)は構造が水(H-O-H, エイチツーオーですね)に似ていることもあって、少し水に近い性質をもっています(親水性といいます)。そこで、複数の物質からなる混合物がこのカラムを上から下に流れていく際、水に馴染みやすい物質はシリカゲルとも良く馴染み「なかなか下に落ちてこない」、また、水に馴染まない物質(疎水性の物質)はシリカゲルとも馴染まないので「早く下に落ちてくる」という具合に分離されていきます。
(高校生で化学を選択されている方は、水素結合を形成しやすいかどうかという観点から分離の原理を考えてみて下さいね。)

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これはきれいに分離できていますね。シリカゲル充填や試料導入の操作が良かったのでしょう。
下はバイオ実験の様子です。画像のみ掲載しておきます。

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前期期間も残りわずか。実験のレポート作成や前期末試験をクリアすれば、学生さんたちは夏休みです。下宿生の多くはご実家に帰省されて、リフレッシュされることでしょう。また、アルバイトや旅行で予定が詰まっている方もいることでしょう。

よく誤解されるのは「大学の先生って、夏休みは休みなんでしょ?」ということ。
とんでもありません。授業こそありませんが、研究室での研究活動は走り続けていますし、高校生や高校の先生対象の実験講義や模擬講義などもあり、普段にも増して忙しいくらいなんですよ。


3年生実験の紹介(4)

酵素や抗体など、わたしたちの体内の分子には、特定の物質を識別するという能力をもつものがたくさんあります。酵素が識別する物質は「基質」、抗体が識別する物質は「抗原」と呼ばれます。「識別している」と意識をされたことはなくても、これらの用語は聞かれたことはあると思います。

酵素や抗体などの「識別」能力を活かして、特定の物質を計測するようにつくられたセンサーを、バイオセンサーといいます。

土田君の3年前期のテーマは、農薬を検出するバイオセンサーの開発です。農薬は、(不本意にも漏れ出してしまうということではなく)積極的に環境中にまかれる物質ですので、環境中や農作物中の残留農薬のチェックは欠かせません。環境中や農作物中にはさまざまな成分が混在していますので、その中から農薬だけを識別して計測することができるバイオセンサーが役に立つ、というわけです。

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上の画像は土田君が作製したセンサー基板。チッ化ケイ素という素材の板の表面に、農薬を識別することができる「人工抗体」が薄く貼付けてあります(とても薄いのでこの画像ではよく見えません)。農薬が基板上にやってくると、この人工抗体にキャッチされます。下の画像の装置(反射型干渉分光計といいます)は、その様子が測定できるように設計されています。

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(さあ、農薬を注入して・・・、センサー応答が得られるか!?)

大変幸いなことに、小さいながらも、農薬に応答したシグナルが見られました。人工抗体と反射型干渉分光計を使って農薬を測定したのは、土田君がはじめて。まだ高濃度の農薬しか検出できませんので、実際の環境分析や農作物分析に応用するには、さらに感度を向上させる必要がありますが、うまくいけば「安価で大量生産可能な人工抗体で作製できる新しいタイプの農薬センサー」として専門誌に掲載される可能性があります。前期期間の終了まで、あと2週間。性能向上を目指して、がんばってください!


スパコン市民講座に行ってきました

以前にもご紹介した次世代スパコン・京コンピュータ市民講座
会場がポートアイランドキャンパスから近いこともあって、聴講して参りました。

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(会場となったニチイ学館さんの建物)

計算速度世界一を達成したということもあり、神戸市民の関心も高いスパコン。市民講座は大盛況で、うっかり事前申し込みをしていなかったため、欠席者待ちというかたちで会場に入ることができました。

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市民講座ということもあって、スパコンの性能に関してとてもわかりやすく説明が。

「スーパーコンピューター『京』はトランジスタ50兆個でできている。人間は60兆個の細胞からできていますが・・・。」 

「甲子園球場に5万人の人がいるとしましょう。一人あたり一秒間に一回計算して6400年掛かる計算を、『京』は1秒間で終えることができます。」 

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一般の方に専門的な内容をわかりやすく話すのはとても難しいのですが、さすが国家的プロジェクト、誰にでもわかりやすく説明する工夫は、大変参考になりますね。 

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(街灯にも「世界一」を祝するペナント!) 

キャッチアップ・セミナー(有機電子論)

先週金曜日(7日)の夜、1年次開講科目「有機電子論」のキャッチアップセミナーが開催されました。

(キャッチアップセミナーについてはこちらをご覧下さい。)

高校生や一般の方にとっては「有機電子論」という名前は、難しそうな響きがするかもしれません。が、1年生に教えるこの「有機電子論」は、難しすぎる話は置いておいて「おもしろいところ」を選んで講義がされています。

何が「おもしろい」のかというと、一言で言えば「どうしてそんな反応が起こるのか?」ということが理解できるようになる、ということです。有機化学は暗記もの、と思っている人はいませんか? 「どうしてそんな反応が起こるのか?」という原理が理解できれば、暗記に頼ることなく、化学構造を見ただけで「あー、ここがこういう反応をするなあ」とわかるようになるわけです。そうなればしめたもの。「難しすぎる話は置いておいた」としても、有機化学については1年生にして他大学の3年生並み(注:ブログ編集者の私的判断)の力を身につけることができます。実際に、この講義を聴いて「有機化学が好きになった」という学生は少なくありません。

今回のキャッチアップセミナーの様子です。

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(他人に説明しようとするのが、最善の理解度確認法ですね。)
 
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(構造式を描き慣れるのも大事なこと。見守っているのは有機電子論の担当者で、オトギリソウバーベナなどの記事のライター、村嶋先生。)

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(他大学の先生がご覧になっても、おそらく、板書の内容からは彼らが1年生だとわからないでしょう!? だからといって闇雲に難しいわけではありません。「基礎=大事なこと」から先に学んでいこうという考え方です。)

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期末試験は7月29日に決まりました。 幸運を祈ります! 


兵庫県高等学校 生物部会総会・研究会

今週の火曜日(5日)、ポートアイランドキャンパスにて兵庫県高等学校 生物部会総会・研究会が開催され、多くの高校の先生方が本キャンパスにお見えになりました。

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(7Fレクチャーホールが総会・研究会の会場になりました。)

プログラムには、本学部の西方先生による「ホヤでわかる! 遺伝子・ゲノム・ヒト・進化」と題した講演も。

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プログラムの最後には、キャンパス見学会も行われました。

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(突然の”振り”にもかかわらず自身の研究紹介をしてくれた3年生の前田君(左奥)。)

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(1年生の学生実験もご見学頂きました。)

このような機会を通じて、甲南大学の魅力を少しでもたくさんの方々に知っていただければと思っています。