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短期留学体験型科目でシンガポールの”最先端”に触れる(2)

シンガポールの大学や研究機関を訪問する短期留学体験型科目「エリアスタディーズ」。

いろいろな国を訪れるコースがあるのですが、その中からフロンティアサイエンス学部(FIRST)がコーディネートしているシンガポールコースをご紹介しています。

(前回の記事はこちらこちら。)

 

今回は、ある受講生(FIRST 1年生)のレポート(抜粋)をご紹介したいと思います。

1週間という短期のプログラムですが、受講生各々が新鮮な経験をして、将来を真剣に考えるきっかけになった、ということを、みなさんにも読み取っていただけるのではないかと思います。

 

「シンガポールでは、各地で日本ではあまり見ない景色が広がっていました。密集したビル群、そのすぐ横には自然が広がっていたり、伝統的な家屋が広がっていたりしました。建物だけでなく、道路を行き交う人々も日本とは異なりました。中国系、インド系など多種多様な人種が様々な言語でやり取りを行い、時には当たり前のように数カ国語を使って会話をしていました。」

Singapore_images

(文化についても時代についてもさまざまな顔をもつシンガポール。)

 

「私とほとんど年の変わらない女性は、流暢に英語、マレー語、ヒンディー語の三ヶ国語を話し、日本語も勉強中と言いながら、見事に使いこなしていました。彼女は将来、医者か教授になるという明確な目標を持ち、勉強に勤しんでいました。私にとって、彼女との出会いが、シンガポールで得られた最も大きな収穫かもしれません。」

Singapore_mix

(シンガポール国立大学の学生さんとの交流。)

 

「海外で働く日本人の方々からお話を聞くことができたことも、私にとって大きな収穫でした。一歩踏み出すことの大切さ、どんな場面、環境においても対応できる適応力の大切さなどを学びました。(中略) まだまだ私は将来、どんな自分になりたいのか、明確ではありません。しかし、このエリアスタディーズで学んだことを常に意識して過ごすことで、今まで気づかなかったチャンスをつかむことができるようになるかもしれません。」

 

シンカ-ホ-ール景色1

 

シンガポールコースは、理系の専門性に関しても深く掘り下げているプログラムですが、まだ専門の勉強を始めたばかりの大学1年生や、文系学部の学生さんにとっても、有意義なプログラムといえそうですね。

 

というわけで、高校生・受験生の皆さん。

もし甲南大学に入学されたら、ぜひエリアスタディーズの受講を検討してみてください。アジアの国々からアメリカまで、いろいろなコースがありますよ。

エリアスタディーズの詳細はこちら


高大接続教育の役割も 〜キャッチアップセミナー〜

少人数制を特徴とするフロンティアサイエンス学部(FIRST)。

入学定員45名というコンパクトな学部です。

そのメリットは、教員と学生、お互いに “顔” が見えるところではないでしょうか。

 教員の立場からすると、文字どおり “顔を見ながら” 授業をしていると、「学生が理解できてなさそう」という気配を知らんぷりはできないもの。

先日も「無機化学」という授業で、授業内容の補足をする「キャッチアップセミナー」が開催された、と学生から聞きました。

FIRSTの入試は理科1科目で受験できるのですが、「無機化学」を理解するのに役立つ「物理」を高校で選択していなかった学生のために、このセミナーが開かれたそうです。

 

CatchUp_inorganic_600

(FIRSTの3年生のスチューデントリーダーが情報と画像を提供してくれました。左下の図は、おそらく、学生さんに向心力を体感してもらっているところでしょう。)

 

このようなセミナーは正課の授業時間外に開かれます。

定期試験が近づくと、過去の授業内容の「復習」型や、例題を解く「演習」型のキャッチアップセミナーのリクエストが、今期も学生からあがってくることでしょう。

学生の皆さん、少人数制のメリットを目一杯活用してくださいね。


水曜と木曜は2年実験の日(4)

後期の授業が開始して3週間あまり。

学生の皆さんも、そろそろ調子が戻ってきた頃ではないでしょうか。

 

さて、後期も学生実験の様子をご紹介していきたいと思います。

フロンティアサイエンス学部(FIRST)では、1年生は週1、2年生は週2、3年生は週3で実験の授業が組まれています。

 

4年生ですか? 

4年生は学生実験ではなくて「卒業研究」になるので、それはまた今度説明しますね。

 

今回紹介するのは2年生実験から2つ。バイオ・テーマとナノ・テーマです。

 

まず、バイオ・テーマ。

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「HeLa(ヒーラ)細胞を数えているところです。(by 画像の学生Tさん)」

 

HeLa細胞は、1950年代に確立された世界初のヒト由来の細胞株で、細胞の持ち主であったHenrietta Lacksさんの頭文字からHeLa細胞と名付けられました。今では、基礎生物学から医療関連まで、さまざまな細胞を使った研究に欠かせないものとなっています。

2年生の実験では、このHeLa細胞を取り扱う技術の習得を行なっています。

#ちなみに「細胞株」とは、特性や遺伝的背景が均一な細胞の集団のことです。均一でないと、実験をするたびに違う結果が得られてしまいますので、ヒト由来の細胞株というものが科学全般にとっていかに重要な存在か、ということですね。

 

次はナノ・テーマ。

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「金ナノ粒子を合成しています。(by 画像の学生)」

 

ナノとは10-9のことで、ナノメートルは10億分の1メートル。

といってもピンときませんね。

もし、地球の直径が1メートルだとしたら、1ナノメートルはビー玉(直径1.4cm)くらいの大きさに相当する、と考えると・・・・ いやいや、やっぱり小さすぎてよくわかりませんね。

 

これだけ小さいと、私たちの身の回りにある物質も、普段知っている性質とは異なる性質を示すことがあります。

金(gold)もその一つ。

金のナノメートルサイズの微粒子(金ナノ粒子)の溶液は、画像からおわかりいただけるように赤色なんですね。

金なのに金色ではなくて、赤色なんです。

#ちなみに手前の溶液(黄色)は、微粒子になる前の金イオンの溶液です。

 

しかも、金ナノ粒子には、微粒子同士が集合すると色が赤から紫に変わるという性質があって、この性質は診断技術に応用されているんです。

例えば、尿中の “病気の目印になる成分” に対して金ナノ粒子が集合するように設計しておくと、尿サンプルに金ナノ粒子を混ぜて「色が赤から紫に変わった」から病気かも!?、という具合に、診断ができるんですんね。

この原理は、実際にいろいろな病気の診断や健康状態のチェックに応用されています。


短期留学体験型科目でシンガポールの”最先端”に触れる(1)

国際交流・留学のプログラムが充実している甲南大学。

われわれフロンティアサイエンス学部(FIRST)も、短期留学体験型科目「エリアスタディーズ」の一つをコーディネートしています。

それは、1週間のシンガポールコース。

現地の大学や研究機関を訪問するプログラムです。

訪問先で、英語で自分の学部や研究についてプレゼンをする時間も用意されているんですよ!

 

FIRSTだけでなく、理工学部、知能情報学部、法学部、マネジメント創造学部の学生たちも参加。

違う学部の学生間の交流も、新鮮だったことと思います。

今回の記事では画像から、交流のどんな雰囲気だったのかを知っていただこうと思います。(なかなか研究施設の写真は撮ることができませんので、どうしても楽しそうなところの画像が中心になってしまうのですが。)

次回は、参加学生のレポートを紹介させていただきますね。

 

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1年生も大勢参加してくれました。外国の文化に早い時期に触れるのはいいことですよね。

 

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シンガポールで活躍する甲南大学OBのお話も。刺激になりますね。

 

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このエリアスタディーズをコーディネートした三好教授と、シンガポールでの研究歴をもつ川内講師。

 

最後はこの1枚を。

そうです。真ん中が「嵐を呼ぶ男」川上教授です。

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2度あることは3度ある?

(この記事は、こちらこちらから続く内容になっています。)

 

嵐を呼ぶ男・川上教授のフィールドワーク型授業。

第3弾は・・・

9月12日、大型放射光施設(SPring-8)を見学させていただき、敷地内の放射光ナノテクセンターで兵庫県立大学の篭島靖先生の講義を拝聴いたしました。

 

で、まず、大事なとこ。

台風は来ませんでした。無事に授業が成立し、ホッとしました。

というのも、大学の規則で「暴風警報が出たら安全上の理由で授業はナシ」になるのですが、今回のような場合、問題はその代講です。

代わりの日にやるといっても、先方様もうちの学生も、別の日に丸一日時間を空けるというのはほぼ不可能ですので、今回、無事に開講できてよかったなあ、と思っているわけです。

しかし・・・。

さすが(?)は嵐を呼ぶ男・川上教授。

嵐を呼びました。大雨警報です。

 

41456626 - bad weather driving poor view caused by heavy rain and spray water

(イメージ画像です。)

 

当日の朝、大雨のためJR神戸線が遅延し、授業開始が遅くなってしまいました。

おそるべし川上教授!

 

さて、無事に行われた授業のその内容ですが、放射光に関する基礎知識について講義を受けた後、SPring-8を見学させていただきました。

 

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光(電磁波)を使って物質の構造や性質を調べる実験は、生命化学分野でもお馴染みですが、日頃扱う実験装置とはスケールが違います。

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SPring-8の蓄積リング棟内部。

リングといっても全長1.5km。

その中で、ほぼ光の速さまで加速させた電子を磁石で曲げた時に発生する「放射光(X線)」を使って、今まで見えなかったものを原子レベルで見ることができる施設です。

 

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X線自由電子レーザー施設(SACLA)。

位相がきれいに揃ったX線を発生・利用することができる施設で、タンパク質などの分子の原子レベルの動きを観察することができます。

 

朝から18時までの集中講義。

篭島先生をはじめ放射光ナノテクセンターのみなさま、どうもありがとうございました。

 

午後からは青空も見えて、SACLAの出入口からは西播磨の美しい景色。

 

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というわけで、川上教授の「嵐を呼ぶ男シリーズ(?)」は今回でおしまいです。