(分野の説明)

ファインケミカルは、医薬やエレクトロニクスなどの最先端テクノロジーを支える物質やその合成中間体のことで、用途に応じた性質や機能を備えていることから、一般の物質と比較して高付加価値をもちます。化学系企業が利益を上げる方法は、単純化していえば、1)どの企業でも扱っている一般的な物質をできるだけ安価に入手して大量に売るのか、2)ほかの企業ではつくれないような特殊かつ有用な物質(ファインケミカル)を開発して高い値段で売るのか、ということになります。ファインケミカルについて学ぶには、有機合成や無機合成の知識はもちろん、さまざまな応用分野や周辺分野の知識を持ち合わせて、「どのような物質が必要とされているか」「どのようなアイデアを活かせば魅力ある物質が作り出せるか」を見出すセンスを磨くことも重要となります。

構造有機化学

ファインケミカルの合成には有機化合の知識が欠かせません。構造有機化学では、有機化合物の分類、構造、性質の基礎について学びます。特に、立体異性を厳密に制御された物質は医療や食品など多くの分野で有用なことから、本科目の単元の中でも、立体化学に関する知識を身につけることは重要です。

有機電子論

ファインケミカルの合成には有機合成化学の知識が欠かせません。有機電子論では、有機合成化学の基礎となる内容(有機化合物の反応性を理解し予測するための知識)を学びます。

無機化学

ファインケミカル開発全般に関わる原子・分子に関する基本概念を学びます。

有機反応各論

有機電子論の知識をもとに、さまざまな有機化合物の反応例に慣れることによって、化合物の合成経路を考案する力を身につけていきます。実際に使われているファインケミカルの合成経路についても学びます。

半導体・デバイス科学

半導体をはじめ、最先端テクノロジーに使われる無機固体材料について学んでいきます。また、無機固体材料が応用される最先端デバイス(装置)に関する知識も身につけていきます。

生物有機化学

酵素等の生体材料をベースにしたファインケミカルや、酵素等のバイオ分子に作用する有機系ファインケミカルについて考える上で必要となる、酵素の構造と反応の化学的理解を進めていきます。

ナノテクノロジー

物質をナノスケールで創製する、および、ナノテクノロジーを用いて加工する、通常では見られない性質を示す付加価値の高い物質の製造と応用について学んでいきます。

有機合成化学

さまざまなファインケミカルを合成するためには、目的化合物の構造から、その合成手段(合成経路、原料物質、条件等)を創案する力が必要となります。本科目では、そのような力を身につけていきます。

アドバンストマテリアル

電子材料原料や医薬中間体などのファインケミカルは、最終的には電子材料や医薬品として活かされることになります。本科目では、エレクトロニクスや医薬に関係の深い、無機系およびバイオ系の機能材料について学んでいきます。

メディカルサイエンス概論

本科目では、人工臓器の作製に有用な免疫吸着素材や、ドラッグデリバリーに有用なナノカプセルなど、医療分野で役立つ新素材に関する知識を身につけていきます。そのような新素材の原料や中間体としてファインケミカルが活かされています。

先端情報テクノロジー

市販のファインケミカルをうまく活かすことによって、研究に必要な化合物や材料の調達を迅速化することができ、研究目的を達成しやすくなる等のメリットが生まれます。本科目では、データベースおよびその検索・管理等について学ぶことで、目的に合ったファインケミカルを探索するスキルを身につけていきます。